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犬・猫において最も危険な誤飲:紐状異物

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前回の記事では、異物全般のお話をしました。

今日は異物の中でも最も厄介で危険な「紐状異物」について、

的を絞って細かく見ていきたいと思います。

 

前回の記事は以下のリンクからご参照ください。

【命に関わるかも】犬猫の異物誤飲の怖さと、飲んでしまった時の対処

 

では早速みていきましょう。

 

どんなものが紐状異物になりえるか

最も分かりやすいのは、紐のおもちゃです。

おもちゃ自体が固いものだったとしても接続部分が紐だったりすると、

そこを齧って飲み込んでしまうという事もあります。

他には荷造り紐もよく家庭に置いてあるので狙われやすいですし、

カーペットやタオルをほぐして出てきた紐状の所が食べられる事もあります。

 

紐ってそんなに危険なの?

今日のメインパートですが、異物の中でも紐が危険な理由は次の通りです。

1.診断が付けづらい(見つけづらい)

2.治療が難しくなりがちである

3.腸の壊死や穿孔を引き起こしやすい

4.近くの臓器に影響が出る場所でひっかかりやすい

個別に詳しくみてきましょう。

 

1.診断が付けづらい(見つけづらい)

獣医として「紐が怖い」と思う一番の理由はこれです。

とにかく見つけづらい!

紐の先端が舌の付け根にひっかかっているのが検査なしに見つかる事もありますが、

すんなり舌の根元を見せてくれる子はそういないですから、

鎮静や麻酔をかけないとそういった所もチェックできないことが多いです。

かといって検査を行っても見つけづらいのが異物の特徴で、

例えば腎不全だったり、肝不全だったり、膵炎だったり、腸閉塞だったりと、

吐き気を引き起こす異物以外の病気はいくつもありますが、

血液検査・超音波検査・レントゲン検査などを行っていくと、

診断を付けるためのヒントがつかめる事が普通です。

しかし異物全般としてそういったヒントが見つかりにくい上に、

その中でも紐状の異物はトップクラスにわかりにくいです。

バリウム検査を行ってようやくわかるかどうか。

それも食べたのが細い紐だったり、バリウムの吸着性が悪い素材だったり、

脂肪が少ない子でコントラストが付きにくかったりすると、

せっかくバリウム検査を行ったにも関わらず、見つけきれないこともあり得ます。

 

色々検査をしてみたものの結局原因がわからないので、

とりあえず内視鏡をいれてみたら紐がいました、というケースもあります。

そのぐらいひも状異物は診断がつけづらい厄介なものなのです。

 

2.治療が難しくなりがちである

紐状異物は、体から取り除くのが難しいことが多いです。

見つけた紐はまず引っ張ってみることが多いですが、

大抵の場合は引っ張ってもすんなり出てきません。

これは紐が色々な所に引っかかって抵抗を生じやすいからです。

また無理に紐を引っ張ると胃や小腸を傷つける可能性が高く、無理ができません。

そのため最終的には胃や小腸を切開しないと取れないという場合も多いです。

胃・小腸を切るというのは思った以上にリスクのある行為でして、

7-16%の確率で縫った所が開くという報告もあります。

(開いた場合には腹膜炎で致死的経過をとる可能性が高い)

そこまでリスクを負わないと取れないことになりやすいということです。

 

また、先ほどの診断がつけづらいという所とも関連しますが、

すぐに診断がついて適切な治療が施されることは少ないので、

本人の体調が落ち、回復力が落ち、結果として治療の反応性も落ちるのも厄介です。

 

3.腸の壊死や穿孔を引き起こしやすい

紐は胃の出口~小腸 or 小腸の手前~奥側の範囲で引っかかる事が多く、

本来は蠕動運動を行うはずの腸を紐で拘束してしまいます。

この不自然な状態にされた腸の細胞は血行不良などで壊死してしまい、

その範囲が広い場合には、腸を切除する必要がでてきますので危険性が高いです。

また最悪の場合には腸に穴が開いてしまい、そこから腸内細菌が漏れ出し、

細菌性腹膜炎を起こして生命の危機に瀕することになってしまいます。

 

4.近くの臓器に影響が出る場所でひっかかりやすい

先ほどの「胃の出口~小腸」の近くには肝臓や膵臓が存在しており、

それらの臓器で作られた消化液の放出口も存在しています。

その場所に紐が引っかかれば腸の炎症が臓器に波及したり、

放出口近くが炎症で腫れて塞がれてしまったりします。

その結果肝炎、胆管炎、膵炎などの他の疾患を併発する可能性があるのです。

 

紐状異物の厄介さを表す1例

理論的にいかに厄介なのかは伝わったと思いますので、

今度は実際に私が出会ったことのある紐状異物の例を紹介します。

 

症例:3歳のオス犬、異物癖は無し

症状:数日前から食欲がなくて、嘔吐が見られる

大まかな経過:

内科治療で反応なし⇒血液検査で膵炎見つかる⇒膵炎治療していても治りが悪い

⇒エコーとレントゲンは何もない⇒バリウム検査は異物がやや怪しい

⇒内視鏡検査で紐見つかるが、引っ張っても取れない

⇒開腹手術で胃と小腸を合計4カ所切開して何とか紐を全て回収

 

文章で書くとさっくり終わりますが、トータルで2週間ぐらい入院は必要でしたし、

治療費もかなりの額になってしまいました。

原因は紐状異物なのに続発した膵炎のせいで異物の発見が遅れ、

かなり治療が長引いてしまったという非常に印象に残った症例です。

 

紐を食べてしまったというだけでこんな一大事になるなんて

ほとんどの飼い主さんは思わないと思いますが、これが現実なのです。

しかもこの子は普段は異物癖のない普通の子だったのです。

すなわち皆さんのペットにも同様の事が起きうるわけなので、

紐状のものにはよく注意をしていただければと思います。

 

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