今日はTLに獣医として背筋が凍るニュースが流れてきました。
都内の某動物病院で、オス猫の性別をメスと誤認したまま不妊手術を進めてしまい、
腹膜を切開した後でオスだという事に気づいたという内容でした。
まあツイッターの話なのでどこまで本当なのかわかりませんし、
再度確認しようとしたら鍵垢になっていたのでうろ覚えにはなりますが、
獣医師としては「どこでも起こりうるミス」という印象がとても強い内容でした。
とりあえず、あれが本当の話なのかどうかは別として、
その内容を見て思ったことを書いてみようかと思います。
性別誤認は起こりうるのか?
猫のオスをメスと間違えることはありうるかと思います。
犬の場合や、猫のメスをオスと間違えることは多分ないでしょう。
さて一般の方のイメージだと雄と雌を間違えるなんてあり得ないと思うでしょうが、
猫の6か月齢程度の早期去勢手術においては睾丸が未発達で陰嚢も膨れていないため、
メスと思い込んでいると気付けないということは十分に考えられます。
そしてメスじゃないと気付くのは子宮を探しても見つからないというタイミングですから、
お腹を切開してから気付くことになってしまうというわけです。
どれだけ探しても子宮が見つからず、まずは避妊済みなのかどうかを疑ってカルテを確認し、
そこで実はオスだったという事に気づいたのではないかと予想しています。
もしかすると、受付のカルテ作成時点で間違っていたりする可能性もあります。
いずれにせよ、実際に起こりうる問題だという事ですね。
動物への愛が足りないというコメントは見当違い
一般の人がどういう印象を抱くのかが知りたくてリプ欄を見ていましたら、
「こんなことに気づかないなんて、なんて猫に愛情のない獣医師だ」
という意見が散見されました。
これは私としては「???」な所でして、
動物への愛情と医療ミスは関係ない要素が大きいのではないかと思っています。
(もちろん、獣医として動物への愛情は必要なのは間違いないですが。)
もし医療ミスがあったなら、それは病院のシステムにそれを防ぐ予防策がないことと、
スタッフの思考や行動のどこかにミスが起きていたことを示します。
そのため「医療ミスがあった=愛情が足りない」というのは必ずしも成立しません。
オペ前の氏名・性別の復唱確認だとか、初診時の生殖器チェックだとか、
そういった病院のシステムや個人の習慣で防いでいくのが正しい方針であり、
動物を愛することで防げる、というのもなんか違う気がするんですよね。
あとは過剰に激務だったり、急患に追われていたりすると、
どんなに動物に対して愛情を持っていてもやるべきことを十二分にやり切れない
なんていう事も起こりうるわけで、原因を考えていくのであれば
やはり「愛情」以外の所に注目するのが正しいのではないかと思います。
個人的に一番問題だと思う点
どうしても間違いというのは起きてしまうことがあります。
そういった時に大切だと私が思うのは、
・対策を考えて同じミスを繰り返さないこと
・ミスによって迷惑をかけた人にはしっかりと説明をした上で謝る
ということです。
とくに今回の件では飼い主さんへの謝罪が不十分なことが最大の問題点であり、
そこがTwitterで苦言を呈するほどの強い感情を引き起こしてしまったのだろう
と予測しています。
飼い主さんも「訴えるべきか」なんて言ってましたが、
本当に訴えるかどうかはあまり問題じゃなくて、
不十分な対応に対して憤りを感じていて、共感されたかっただけかと思いますし。
おわりに
今回の件はたまたま自分とは関係ない所で起きましたが、
普段の自分の診療などを見直す機会となりました。
「他人のふり見て我がふりなおせ」として気を引き締めてやっていこうと思います。
それではまた。