2018年10月1日にZENOAQから犬用の膵炎用新薬「ブレンダZ」が発売になりました。
犬の膵炎は非常によくみる病気であり、
そこに対する新薬となると飼い主さんの関心も高いのではないかと思いますので、
今日はこちらの薬について、現時点での感想を獣医師としてお伝えしたいと思います。
犬の膵炎用新薬「ブレンダZ」について獣医が思うこと
ブレンダZとは?
「ブレンダZ」は犬の急性膵炎の治療薬として新しく発売された薬です。
フザプラジブナトリウム水和物を有効成分とする注射剤で、
5日連続で一日1回の静脈内投与という形で使用されます。
その効果を簡単に述べますと、
「炎症細胞が組織(膵臓)に広がることを防ぎ、
それにより膵炎が悪化するのを阻止することで治療効果を発揮する」
となります。
犬の膵炎とは?
犬にはよく見られる病気で、その名の通り膵臓に炎症が起きたものが「膵炎」です。
何となく食欲がなかったり、吐いて元気が無いなどの理由で病院に行ったときに
血液検査で見つかることが多いと思います。
なおこちらでは詳細について触れませんので、
詳しく知りたい方は下記の病気百科記事を参考にしてください。
ブレンダZの感想
発売からそれほど日が経っておらず、使用した患者さんも多くはないですが、
現時点での感想を一言で述べさせていただくと、
「高齢の子の、命に関わりそうな膵炎については、使うのはアリかな・・・」
という所になります。
どういうことかと説明しますと、
「ブレンダZを使ったら、劇的に改善した!」
という事は確認できませんでした。
しかもブレンダZだけでなく、一般的な膵炎の治療も並行して行っているので、
ブレンダZのおかげで治ったのかどうかが、よくわからないのです。
とはいえ製薬会社の発表データ+理論上は効果があるはずですので、
使うのは無駄ということもなさそうです。
じゃあどんどん使っていけばいいじゃないかと思うかもしれませんが、
新薬だけあって値段が結構高いんですよね・・・
5日間連続投与というのもあって、これをやりきると薬代だけで数万円します!
ということで、ガンガン使える薬ではないものの、
少しの違いで治療成績が変わってくるような症例、
例えば高齢で衰弱した患者さんなどについては値段が高くてもやる価値があるかな、と。
今後、ブレンダZは使われるのか?
「全ての膵炎症例に対して、スタンダードな治療薬として使われるようになる」
ということはないんじゃないかな、と今は思っています。
そこまで行くには値段と効果の実感がネックになっています。
とはいえ、これから使用報告が増えていくでしょうから、
今以上に一般的な薬になるのかもしれませんね。
ちなみにメーカー指定の適用疾患は犬の「急性」膵炎ですが、
理論的には「慢性」膵炎にも使う事が出来そうです。
(ただし適用外使用に該当すると思われます)
その辺りも今後の報告次第で使用頻度が変わってきそうですね。
適用外使用という事でよければ肺の炎症性疾患などにも活用できるのでは?
という話もありますので、潜在的なポテンシャルは高く、
もしかすると数年後には色々な使われ方をするお薬になっているかもしれません。
後は、私は猫の膵炎に使うことは無いと思います。
ネコにも使う獣医師は出てくるかもしれませんが、攻めすぎな気がします。
おわりに
今日は犬の膵炎新薬「ブレンダZ」について、お話ししました。
もし犬の膵炎にお悩みであれば、使用について主治医に相談してみるといいと思います。
それではまた。
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