病気について 耳寄り情報

決して他人事ではない話:愛するペットの最後が近づいた時に、あなたはどのような選択をしますか?

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ペットも長生きが出来るようになり、

高齢化した犬や猫が増えてきています。

それでもいつか必ず別れの時は来るのであり、

その時のために心の準備も必要かもしれません。

特に癌や慢性疾患による臓器不全は高齢化によって増えており、

終末期にどう折り合いをつけるのかで悩む事が少なくありません。

今回は一つの例を挙げて、

そういた病気の時に、実際に飼い主さんがどのように悩んで、

どういう結論を出していったのかを見て頂きたいと思います。

 

 

ミキちゃんのお話

日本猫のミキちゃん(仮名)は元野良猫でしたが、

エサを貰える家を巡っているうちに今の飼い主さんと出会いました。

最初は警戒して遠くから見ているだけでしたが、

差し出したごはんを食べるようになり、

近くにいても警戒しないようになり、

触っても嫌がらないようになり、と

少しずつ距離を縮めていく事が出来ました。

そして飼い主さんはミキちゃんを家に上げる事を決意し、

10年以上の長い間、ともに生活を送ってきました。

保護したての時はウンチの中に寄生虫がいて、

しばらく苦いお薬を飲ませるのに四苦八苦したり、

ノミが飼い主さんにも広がって皮膚科にいったり、

動物病院でワクチンを打ってからしばらく不機嫌になったりと、

様々な事がありましたが、

健康上は特に大きな病気もなく過ごす事が出来ていました。

 

事の発端は夏のある日、

ミキちゃんがご飯を食べないことに飼い主さんが気付きました。

ミキちゃんはご飯を一度に完食するタイプではなく、

少しづつ時間をかけて食べるタイプでしたので、

何となく気分が乗らないだけかと様子を見ていましたが、

その日だけではなく、次の日もごはんを食べません。

なんとなく元気もないようです…

そして次第に嘔吐をするようになり、

その回数も時間と共に増えていきました。

流石におかしいと飼い主さんも思ったので、

動物病院に連れて行くことにしました。

 

病院にて

まず診察室でわかったことは、

・脱水がある

・なんとなく舌の色が薄い

・体重がいつもより少ない

・少し体温が高い

という事です。

症状も含めてあまりよい兆候ではないという事で、

先生からいくつかの検査を提案されました。

しばらく健康診断もしていなかったので、

飼い主さんはそれを了承し、

ミキちゃんをしっかりと検査してもらう事にしました。

ただ病院が込み合っていて検査に時間がかかると言われたので、

一度自宅に戻ってから再度病院に訪れるようにしました。

自宅に戻ってからテレビなどを見たりして時間を過ごしましたが、

何となく落ち着かないので少し早めに病院に行ってみたところ、

丁度検査が終わったとのことで、

待ち時間を過ごすことなく説明をしてもらえる事ができました。

 

検査の結果は次の通りでした。

【血液検査】

・軽度の貧血あり

⇒新しく血液が作られている様子が見られない

・白血球の数値が高い

・肝臓の数値が少し高い

・電解質のバランスが乱れている

【レントゲン検査】

・特に問題なし

【超音波検査】

・小腸の一部が腫れている

・消化管の運動性が悪い

・腸管膜リンパ節が腫れている

これらの検査結果からミキちゃんは、

「消化器型リンパ腫」

の可能性があると言われました。

今の段階ではまだ確定していませんが、

「腫れている小腸に針を刺して細胞をとれば確定する事ができるかも」

と先生が言うので、それも行う事にしました。

結果が出るまでは1週間ほどかかるそうなので、

それまでは自宅で飲み薬を飲んで治療することになりました。

追加で検査を終えたミキちゃんはだいぶ疲れた様子でしたが、

病院で一旦治療をしてもらったので、

飼い主さんとしては少し肩の荷が下りた感じでした。

とはいえ、まだ病気がハッキリとしておらず、

まだ心が落ち着かないというのが正直な所でした。

 

一週間後

一週間の間、ミキちゃんの状態は良くなったとはいえず、

なんとか食べて体を維持できているという様子でした。

まだ嘔吐も時折見られます。

そして病院へ細胞診の結果を聞きに行くと、

やはり消化器型リンパ腫でした。悪性の腫瘍になります。

と先生から検査結果を伝えられました。

飼い主さんは目の前が真っ暗になった気がしましたが、

先生からは、

「リンパ腫であれば抗癌剤治療で効果があるかもしれません。」

と抗癌剤治療を勧められました。

他に手術で小腸の一部を切除する方法もあるとのことでしたが、

高齢のミキちゃんにそれが耐えられるかどうかの不安が大きく、

手術はしないということになりました。

問題は抗癌剤治療をするかどうかです。

抗癌剤は体にとって毒でもあり、副作用がでる可能性もあります。

治療費も高く、一か月で約10万円の費用がかかるとも言われました。

「お金はかかるけれど、ミキちゃんのためにやれる事はやってあげたい」

「でも抗癌剤の副作用がでたらどうしよう」

そういった考えがまとまらないでいた所、

先生が、

「抗癌剤は途中でやめる事もできます。

しっかり管理すれば、副作用も大きな問題になることは少ないです」

と言ってくれたので、意を決して抗癌剤治療をすることにしました。

 

抗癌剤の開始

それから毎週病院へミキちゃんを連れて行き、

抗癌剤を投与するという生活がスタートしました。

抗癌剤治療を始めてからすぐにミキちゃんの体調は安定し、

小腸の腫れている所も退縮傾向という良い経過が得られました。

しかも副作用も出ておらず、全てが順調です。

 

しかし転機が治療を始めて1か月後に訪れます。

先生の方から、

「抗癌剤の効果が落ちてきている。このままでは症状が再発したり、

命にかかわる様な事になってしまうかもしれない」

と言われてしまいました。

飼い主さんはとてもショックを受けますが、

かといって他に頼れる治療法もないため、

翌週、その次の週と抗癌剤治療を続けます。

しかし小腸の病変は悪化を辿る一方でした。

ミキちゃんの体調も落ちてきています。

一時期は食欲もあって嘔吐も止まっていましたが、

なんだか半分ぐらいしかごはんを食べませんし、

嘔吐も毎日見られるようになってきています。

そのため、飼い主さんは重要な決断をしなければいけませんでした。

・危険を承知で手術をして、体から腫瘍を取り除くか

・今の抗がん剤治療を続けるか

・他の抗癌剤を投与するか

・高度医療施設に行き、放射線治療を受けるか

・緩和治療を行い、痛みや気持ち悪さを取り除く事だけ行うか

これは何が正しいかという問題ではありません。

どの選択肢にもリスクとメリットがあり、

どのような結果がでるかは獣医師にも分かりません。

それゆえに獣医師が決める事は出来ず、

飼い主さんがしっかりと考えた上で決めるしかないのです。

飼い主さんはとても迷いました。

・何がミキちゃんにとって最善なのか

・ミキちゃんを少しでも楽にさせてあげたい

・命の危険に晒したり、体にメスを入れたりはしたくない

・確実に効果があればお金をかけてでもやりたいけれど、

どの治療も良くなるかどうかはわからない

・自分の選択が逆にミキちゃんの寿命を縮めてしまう可能性だってある

一人で抱えるには大きすぎる悩みです。

そのため先生も一緒になって考えます。

・一番大事にしたいことは何か?

・飼い主さんが決めたことにミキちゃんが反対することはない

そういったことを考えつつ、

飼い主さんもなんとか決意を固めます。

 

ミキちゃんの場合は、緩和治療が選ばれました。

治す方向ではなく、本人の生活の質を最優先にして、

出来る限りの治療を行っていくという方針です。

腫瘍の進行はとまりませんので、いつかは体が限界を迎えますが、

それでもその時までのミキちゃんの幸せを確保するのです。

 

それから

ミキちゃんは抗癌剤治療をやめました。

病院に行く必要が無くなったので、

自宅でゆっくりとした時間を過ごすことが出来るようになり、

残された大切な時間を、

飼い主さんと一緒に楽しんでいるようでもありました。

 

そして抗癌剤を止めてから一か月後、

ミキちゃんは旅立っていきました。

最後には体はやせ細り、

ほとんど食べる事もできない状態でしたが、

苦しむ様子はなく、静かに眠るように亡くなったようです。

一か月という短い時間ではありましたが、

飼い主さんは「やれる事は全てやってあげる事が出来た」と

とても満足そうにしていました。

何が正解なのかはわかりませんが、

今回の選択が飼い主さんとミキちゃんにとって

良いものだったことは間違いないでしょう。

 

 

 

 

おわりに

今回はチャコちゃんの話をさせていただきました。

安らかに寿命を迎えるペットも沢山いるとは思いますが、

皆さんのペットにも大きな選択を迫られる時がくるかもしれません。

その時までに一度、チャコちゃんの例をもとに、

自分だったらどうするかを考えてみてもいいのではないでしょうか。

 

それではまた。

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