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獣医師の悩み ~健康な時に手術をすべき?~

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獣医師は日々診療を行う中で、

実は色々な事を考えながらお話をしています。

実際に考えている内容を口に出すスタイルの先生もいますし、

それを出すべきではないとして、決して表に出さない先生もいます。

そして内容に依りますが、私は考えている事を飼い主さんに話す方です。

実際に飼い主さんに話す機会のある悩みとして、

「健康なうちに手術を行うのかどうか」というものがありますので、

今日はそちらについてご紹介したいと思います。

 

獣医師の悩み ~健康な時に手術をすべき?~

 

健康なうちに手術をするべき

現代医学では予防の重要性が告知され、

「何か事が起こってから対処するよりも、

予め早めに対処する方が大事に至らない」

という事は、一般の方にもよく知られています。

獣医療においてもそれは例外ではなく、

問題を見つけた場合には、早め早めの対処が功を奏します。

ということで手術を必要とする病気が見つかった場合には、

健康なうちに手術をすべき、というのは改めて言うまでもない事です。

 

そして「様子を見た結果、酷くなってから手術」というのは、

・全身状態の悪化によるリスク

・時間経過による年齢上昇が引き起こすリスク

・対象以外の臓器の悪化に伴うリスク

・人や器具など手術に必要なものが揃わないリスク

と、色々なリスクが増えてしまうので、オススメしかねます。

やはり健康なうちに手術をするべきでしょう。

 

 

健康な時に手術をしないべき

「先ほど健康な時に手術をするべき」と言っておいて、

突然、何を言い出すんだ、とお考えでしょう。

しかし物事には必ず良い面と悪い面があります。

 

例えば、健康な時に予防的に手術をして、

思った通りの結果が出なかったらどうでしょうか?

麻酔から覚めなかった、手術後に病気の改善が乏しい、

術後に体調が崩れてしまった、麻酔後に腎臓の数値が悪化した、

などなど、

「手術をしたら、思ってもみなかった事が起こる」

という可能性は決してゼロではありません。

病気を治すため、体調が悪い中で仕方なく手術をする。

この時は結果的に良くない事が起こったとしても、

「それは仕方がない」と受け止められる飼い主さんは多いです。

しかし、健康な時に手術をして「良くない結果」が出た時には、

ほとんどの飼い主さんは手術を後悔されると思います。

それであれば、「健康な時に手術はしない方がよい」

と言えるのではないでしょうか。

 

 

じゃあ結局どっちが良いのよ?

これは答えのない問題で、どちらが良いかはケースバイケースです。

病気の内容や、本人の体調、飼い主さんの考え方や、経済状況など

色々な要素で答えが変わってきます。

私がこの問題に突き当たった時には、

両方の考え方を提示して、

最終的には飼い主さんに決めてもらうようにしています。

手術のリスク面を取り上げることになりますので、

人によっては「予防線を張りすぎ、手術に逃げ腰」と

否定的に捉えられてしまう事も有ります。

しかし良い面だけ言って手術を推し進めるよりは絶対に良いと私は思うので、

必ずリスク面の説明はするようにしています。

(何かあった時のトラブルを避けるためにも)

 

 

具体例

具体的な例があった方が分かりやすいと思うので、

フィクションではありますが、一例をご紹介したいと思います。

 

患者さんは13歳のオス猫。

元々腎不全を患っていてはいますが、

体調は問題なく元気に過ごしていました。

しかし定期検診の際に、膀胱結石が見つかってしまいました。

尿検査ではシュウ酸カルシウムが検出されたため、

内科治療で石を溶かす事は厳しいと予測されます。

そしてオス猫は尿道が細いため、

膀胱結石を放置すると尿道閉塞を起こしてしまい、

最悪の場合には命に関わる可能性があります。

そこで基本的には手術で石を摘出する事が推奨されるのですが、

年齢や腎不全の件があるので麻酔のリスクが存在します。

「今は健康に過ごしているのに、本当に手術をする必要があるのか?」

飼い主さんとしては当然この考えがまず浮かぶわけですが、

そこに対して、

「手術をするべきです」と言い切る事ができるのか?

という悩みですね。

 

石をそのままにしておいても、何も問題ないかもしれない。

でも将来とんでもない事態になる可能性もある。

かといって解決するための手術にはリスクがあって、

別に今困っているわけではない・・・

皆さんであれば、どうしますか?

(残念ながら、これが正解という答えはありません)

 

 

 

おわりに

今日は獣医の臨床現場での悩みの一つをご紹介しました。

飼い主さんを啓蒙したいとかそういう高尚な目的はなく、

とりあえず紹介してみただけではありますが、

何かを考えるきっかけにでもなると幸いです。

それではまた。

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