病気について

猫の肥大型心筋症(HCM)の最善な治療を行うには

投稿日:

猫の心臓疾患のうち、一番多いものが肥大型心筋症です。

通称HCMと呼ばれ、以下の文章ではHCMと記載させていただきます。

さてこのHCMは臨床上よくみかける疾患にも関わらず、

(私の知る限りでは)治療方針のスタンダードが決まっていません。

そちらについて、今日は少しお話ししたいと思います。

 

猫の肥大型心筋症(HCM)の最善な治療を行うには

 

そもそも治療方針とはどのように決まるのか?

病気の治療方針は、病気にもよりますが色々な選択肢が考えられます。

古くは獣医師の経験に基づいて治療方法が独自に選択されていましたが、

それが本当に最善の治療かどうかは疑問が付きまとうわけです。

そこで最近では何がベストな治療なのかという根拠として、

医学論文などの「エビデンス」を使用することがスタンダードになりました。

例えばリンパ腫に対して、

Aという抗癌剤を使用した時の論文と、

B、Cの抗癌剤を使用した論文があったとします。

これらの論文を元にA、B、Cの成績を比較すれば、

少なくとも3つの抗癌剤の中では、

どれがより良い選択肢なのかを判断できるようになります。

このようにエビデンスに従って治療していく事を

Evidence Based Medicine(根拠に基づく医療)と呼びます。

またこれにより選択された治療法は、標準治療とも呼ばれ、

特に理由が無い場合には、それを選択する事が望ましい治療法となります。

 

なお余談ですが、

怪しい健康関連商品(民間療法)がよろしくないのは、

大抵エビデンスがない口先だけの商品だからです。

それっぽい事が書かれていたとしても、

大抵は「個人の感想」なので再現性や化学的根拠性が一切ありません。

そういうニセ医学に騙されないように気を付けましょう。

「『ニセ医学』に騙されないために」を獣医師が読んでみた

 

HCMについてはエビデンスや標準医療はどうなのか

私はHCMにそこまで詳しい方ではありませんが、

いくつかの獣医療雑誌や成書を見る限りでは、

HCMに関する有効なエビデンスは揃っていないようです。

循環器の得意な先生の間でも、行われている治療法が異なっており、

1次診療を中心とする獣医師としてはなおさら治療に迷うわけです。

 

じゃあ今はどうやって治療が決められているのか?

エビデンスが揃ってない以上、

現状は主治医の判断に全て任されています。

どこかの循環器専門の先生の治療法に従う事も出来ますし、

自身で考えた治療を選択する事も出来ます。

そしてどのような選択肢が取られたとしても、

よっぽど意味不明なものでない限りは、

妥当な治療だと考えられるでしょう。

 

それでもベストな治療をしてあげたい!

エビデンスが無い中でベストを追及していくとなると、

「治療法をどれにするか」という観点で探すよりも、

「現状を正しく評価できる」という事を重視するのが良いかもしれません。

 

どういうことかと言いますと、

HCMと一言で言っても、心臓の状態としては色々あり得るわけです。

・心筋の厚みが6mmなのか、10mmなのか

・心筋は自由壁が厚いのか、中隔壁が厚いのか

・左心房の拡大はどの程度なのか

・僧帽弁の逸脱を伴うのか

・右心系は正常なのか

・血圧はどうか

などなど・・・

これらを正確に評価できている方が、

スタンダードな治療が決まっていない中でも、

より良い治療方法が選べると思いませんか?

 

ということで、心臓の状態を出来るだけ正しく評価できる主治医を見つける事が、

できるだけ良い治療に繋がるのではないかという考え方です。

そしてそれはどんな獣医かと言うと、

心疾患の症例を数多く診ている、循環器専門医ということになります。

つまり町医者の1次診療ではなく、2次病院とよばれる専門医に行くという事です。

そして専門医は知識・経験が豊富なだけではなく、

高価な超音波機械を導入している事が多いため、

設備的にもより正確に評価できると思われます。

ということで、ベストな治療を探すにあたっては、

循環器の専門医を紹介してもらうのが良いのかと思っています。

 

 

おわりに

今日は猫の肥大型心筋症(HCM)の治療法についてお話ししました。

具体的な治療法については割愛させていただきましたが、

ベストが決まっていない中でどうしていくかという事の

参考にしていただけると幸いです。

それではまた。

-病気について

Copyright© わんにゃんライフ ~獣医師監修~ , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.