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犬・猫の余命告知は難しい。獣医師を悩ませる理由とは

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今日は重たい話になりますが、

犬・猫の余命告知に関してお話ししたいと思います。

ペットも人も、永遠の命ではありませんので、

必ずお迎えというものがやってきます。

生活習慣や体質、持病など、変数が多すぎるので、

全てのペットについてその時期を予想するのは困難です。

しかし病気の時、特に命に関わる疾患では余命を聞かれる事が多いです。

さて、ここで質問です。

人、ペットどちらについてでも構いませんが、

「余命をどうやって予想しているか」考えたことはありますか?

医者・獣医だから何でも知っている訳ではありません。

かといって当てずっぽうで答える訳にもいきません。

じゃあどうしているのか?

ということで、余命告知の世界を垣間見てみましょう。

<注記>

今回の内容はあくまでも私の知っている事を基に書いています。

ただ単に私が無知な獣医なだけで、

もっと望ましい方法で余命予測をされている先生も

もしかしたら、いらっしゃるかもしれません。

あくまでも参考程度に留めるようにお願いいたします。

 

犬・猫の余命告知は難しい。獣医師を悩ませる理由とは

 

余命の重要性

敢えて語るまでもないですが、

ペットの余命というのはとても重要な情報です。

健康な時や若い時には意識する事がほとんどありませんが、

年老いた時や、死期が近い時ほど重要になってきます。

どの程度残された時間があるのかということを基に、

飼い主さんはペットとの時間の過ごし方を考える事になります。

そしてその時間の過ごし方によって、

飼い主さんの満足度も大きく変わってくるからです。

本来は若くて健康な時でも余命の意識はあった方が良いですが、

本題とは外れるので今日はコメントしないでおきます。

 

 

余命を予測する方法

さて、そんな重要な情報である「余命」。

一体どうやって獣医師は決めているのでしょうか?

 

1、エビデンスに基づく

最も望ましい方法は、

論文や学会発表などの「エビデンス」を基に、

余命を告知するという方法でしょう。

例えばリンパ腫や扁平上皮癌、肥満細胞腫などのよく見られる腫瘍では、

各治療法や無治療経過観察時の正存期間の中央値が報告されています。

犬種・猫種や年齢、発症部位など細かい違いはあるでしょうが、

ある程度の根拠をもって余命を決める事ができます。

 

ちなみにエビデンスに基づいて余命をコメントできるケースは、

実際はそれほど多くないと個人的に感じます。

今よりも獣医療が発展すれば変わってくるかもしれませんが、

現時点であまり期待はしない方がよいでしょう。

 

2、経験に基づく

残念ながら全ての病気についてエビデンスがあるわけではありません。

しかし飼い主さんからは余命の告知を求められます。

こうなると、獣医師個人の判断で余命を予測するしかありません。

それまで診たことのある患者さんの経験を基に、

今の患者さんの病名や経過、

体調などを合わせて予測する事になります。

これは裏付けのない個人の予想に近いものになるので、

1に比べると外れる可能性が高くなります。

しかし飼い主さんからすれば、

「獣医師から告げられた余命」

というものはとても意味を持ちますので、

こちらのケースでは精度が低くなるということは

全ての人が知っておくべきかと思います。

なお、私はこのケースに当てはまる時には必ず、

「エビデンスに基づかない私個人の予測です」と

前置きをしてから結果をお伝えするようにしています。

(他の先生がどのようにしているかは正直わかりません)

 

 

余命の予想が困難なケース

前項目で、エビデンスもしくは経験に基づいて余命を予測していると書きました。

それゆえに、以下の場合には余命の予測が困難になります。

 

<エビデンスがない場合>

特に発生率の低い疾患や、治療法の確立されていない疾患で問題になります

 

<獣医師が経験不足な場合>

新米の獣医師は経験が無さ過ぎて、予測はほぼ不可能です。

実際には院長に相談がいき、院長の予測が告知される事になるかと思います。

 

<原因や治療経緯が分からない場合>

何の前情報もなく、原因もわからない場合には予測が困難です。

全身状態などからざっくりとした予想はできなくはないですが、

あってない様なものだと思った方が良いです。

 

 

余命予測の精度を上げるには

先ほどとは逆の場合には予測の精度が上がることになります。

・エビデンスがある場合

・獣医師の経験が豊富

・診断がついている場合

・これまでの治療経過がわかっている場合

これらを踏まえると、

腕と経験のある獣医に日頃から定期的に診てもらう

ということの重要さが伝わるのではないかと思います。

 

 

余命告知の難しさとは

正直なところ、私は余命告知をしたくないです。

余命という超重要な情報で飼い主の満足度を左右するものを、

根拠もなく個人の予測でお話しするしかないケースがほとんどなわけです。

当たっても獣医師だから当たり前でしょうと取られ、

外れたら文句を言われるか、無能だと思われかねない。

「わかりません」と言えたらどんなに楽な事でしょう。

とはいえ、そんなことは許されないですし、

そこに対する義務や責任を持つからこそ

「獣医師」という国家資格があるのでしょうから、

分からない中でもなんとか頑張って予想しています。

 

ちなみに最も恨まれるのは、

「長い余命を宣告して短命に終わるケース」でしょうから、

それを避けるために保険をかけるとすると、

獣医が告知する余命は短めになりやすいんじゃないか

と個人的に思っています。

 

 

余命予測は答え合わせも難しい

なんと予想をするのが難しいだけでなく、

余命予測は答え合わせも難しいのです。

病院に細かく通ってくださる方の場合、

いつ頃亡くなったかもわかりますが、

腫瘍が見つかった段階で病院に来なくなってしまったり、

通院の途中で急に見かけなくなってしまうことも良くあります。

こうなると、実際にどの時期に亡くなったかが分からず、

自分の予測が正しかったのかどうかがわからないわけです。

(こちらから電話して聞くわけにもいかないですし)

丁寧な方は、亡くなった際にご挨拶に来て下さるので、

そういったケースは自分の予想がどうだったかを知ることが出来ます。

 

 

まとめ

以下の理由で、余命告知は難しい。

・命という最重要項目に関わる

・患者によって状態や背景、治療内容が毎回異なる

・エビデンスに欠ける事も多い

・外れると患者を失望させる

・予想が当たっていたかどうかの確認が難しい

以上、ご参考までに。

それではまた。

 

 

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