ペットが高齢になってくると体のいろいろな場所にイボができやすくなってきます。
飼い主さんとしては様子見でもいいのか、病院に行った方がいいのか悩むと思います。
イボを見つけたので診て欲しいと病院に連れてくる飼い主さんも実際多いです。
飼い主さんの中にはイボを見せればどんなものなのかわかる(診断がつく)
と思っている方がいますが、そんなことは決してありません。
確かに「この見た目と触った感じなら、あれの可能性が高いかな・・・」
とあたりを付けながら診察に望んではいますが、決して診断をつけることはできません。
そんなことをするのは誤診の元です。
たまに見ただけで診断をつけてしまう獣医がいますが、
「本当にそんなことができるなら名医どころか神でしょ」
と思ってしまいます。
すなわち、
「見たり触ったりするだけでは、ほっといても大丈夫かどうかはわからない」
ということです。
イボやしこりの良しあしを判断するには?
じゃあどうするのかという話になるのですが、
体にできたイボやしこりが、良いものか悪いものかを区別するには、
それを構成している細胞がどういう顔をしているか調べる必要があります。
その細胞の取り方は2通りです。
1、細胞診検査(FNA):イボに針を刺してごく一部の細胞を採取して行う検査
2、病理検査:イボの一部or全部を切り取り、細胞を塊で採取して行う検査
これらの方法で採取した細胞を薄いガラスの上に吹き付けたり、
塊から薄くきったものを貼り付けて、
その後色を付けて細胞の構造が見やすいようにしてから顕微鏡で観察します。
良性の腫瘍であれば普通の見た目の細胞がいますし、
悪性の腫瘍であれば悪そうな見た目をした細胞がいます。
イボが腫瘍ではなく、肉芽種という炎症の後にできるものの事もあります。
その場合にはイボから炎症細胞などが採れることでわかります。
なお細胞診検査と病理検査にはそれぞれメリット・デメリットがありますので、
個々の状況に応じて適切なものを選択して行っています。
それを詳しく見ていきましょう。
<細胞診検査>
長所:傷が小さくて済む、病理よりも費用がかからない、結果が出るまでが早い
短所:良性・悪性を確定できない、針先の位置にある細胞しか採取できない、
イボの内部構造についてはわからない
<病理検査>
長所:良性・悪性を含めた確定診断が可能、イボの内部構造の変化についてもわかる、
採材量が多いので追加検査などが容易
短所:傷が大きい、場合により全身麻酔が必要、結果が出るまで時間がかかる、
細胞診よりも費用がかかる
通常はイボに対して侵襲の少ない細胞診を行い、
良いものか悪いものか大体の方向性を見極めます。
悪いものであれば急いで切除して病理検査に提出し、結果に応じて治療を考え、
悪いものでなさそうならば経過をみるという風に進むことが多いです。
もちろん全てがそういったパターン化した対処でうまくいくわけではありません。
イボから出血していたり、本人が気にしてしまう場合などは
細胞診の結果が良性だったとしても切除してしまうことなどはあります。
逆に細胞診で悪性が疑われても、麻酔がかけられない場合や、費用面の問題などで
経過を見ていかざるを得ないこともあります。
その辺はケースバイケースで獣医が臨機応変に対処しています。
今日のまとめ
・イボの良し悪しは見た目ではわからない
・通常は、細胞診 → 経過観察or病理検査 と進んでいくことが多い
・個別の状況に応じて獣医が臨機応変に対応している