犬を飼うときに必要な3つの予防で少し触れましたが、
今日はそもそも予防は必要なのかということについて考えておきたいと思います。
ちなみに予防について無関心・否定的な飼い主さんは一定数いらっしゃいます。
個人の自由ですので、予防を強制することは当然できませんが、
獣医師の観点からすると、予防はやっておいた方が良いからおススメしています。
必要性を伝えても予防をしないのは勝手ですが、
それで病気になって困っても知らないよ、まず治せないからね~
というのが私のスタンスです。
さて、前置きはそのぐらいにして早速本題へ。
そもそも予防とは?医療における意味は?
予防:悪い事態の起こらないように、前もって防ぐこと
つまり医療的には病気になる前に防ぐということです。
以降の文章では基本的に医療における「予防」について考えます。
人間の医療においてもそうですが、大抵の病気は発症してからなんとかするよりも、
そもそも発症しないようにする方が圧倒的に有利です。
悪化したとしても元の正常な状態に戻るものならよいですが、
心臓・腎臓・脳・神経系など一度悪くなってしまうと機能が回復しない臓器も多いです。
なので、できるだけ予防できるものは予防して、
それでも出てくるものは早期発見・早期治療によって有利なうちに治してしまおう。
そういった動きが理想の医療として考えられています。
予防開発の優先順位から必要性がわかる
欲を言ってしまえば、ありとあらゆる全ての病気について予防をしたい、
しかし実際にはそんなことは不可能です。
(例えば、地球上の全ての感染症についてワクチンを作ることを考えてみましょう)
そのため予防法を開発する対象には、必ず優先順位がつけられているはずです。
最も優先順位が高いものは、「命に関わるもの」。
次に優先されるものは、「生活の質をさげるもの」。
最後に来るものは、「あってもさほど困らないが、ないとより良いもの」
これらの優先順位に対して、実際の症例数を加味して予防薬や対策が考えられていきます。
そのため今、世の中に存在する予防というのは、
最も優先順位が高く、実際に遭遇する可能性が高いものに対して存在する
⇒必要性のあるものだけが存在する
ということになります。
こう考えた時点で、「実施できる予防をやらない」というのは
かなりもったいない行為というのがわかってもらえるでしょうか?
無駄・無意味・不要な予防は存在するのか?
直前の考察を踏まえると「そんな予防は基本的に存在しない」となります。
ただ例外的な事象を考えると、
昔は存在していたが、今は根絶されて存在しないと思われる病気に対する予防
というのは該当するかもしれませんね。
人でいうなら天然痘ウイルスのワクチンがそれにあたるでしょうか。
あとは似たようなケースですが、
昔は予防できていたが変異や環境の変化によって予防薬がきかなくなってきた
というものもありえるかもしれません。
さらにそれに似た派生ですが、
効果があるとして発売されたが、実際には優位性が認められない予防薬
こんなものもあり得るかもしれません。
ちなみにこのケースと思わしきものが1つ獣医界にありまして、
それは猫の白血病(FIV)ワクチンです。(獣医によって意見が異なる可能性があります)
FIVワクチンは今も発売がされていますが、
FIVはワクチン接種による予防効果が認められないという話があります。
私は原著となる論文を探して読んでいないので、「思わしきもの」と付けました。
断言できなくて申し訳ないのですが、FIVワクチンだけは意味がないかもしれないです。
ちなみに一般的な猫のワクチンにFIVワクチンは含まれていませんので、ご安心ください。
さて、話がややこしくなってしまったので、整理すると、
・予防は必要性があるものから作られるので、やった方が良い
・猫エイズ(FIV)ワクチンだけは意味がないかもしれない
この2点が結論となります。
参考になりましたでしょうか?
それではまた。