そんな風に聞けたなら、われわれの仕事はとってもやりやすいのに・・・
というのが今日のお話です。
特に中身のない与太話ですので、ふーんぐらいに読んでもらえれば大丈夫です。
え?いきなり何の話をしているの?
どういうことかといいますと、
「かけられる費用はいくらですか?治療レベルはそれに応じて変わります!」
ということを直球で飼い主さんに聞きたいということです。
まあこういう言い方をすると、
「お金で人を判断するのか」とか
「命に貴賤はないだろ」とか
よからぬ炎上をきたしそうなので、マイルドな言い方をすると
「診断精度や治療効果を高めることを優先してもよろしいでしょうか?
ただし費用が多めにかかってしまうのですが・・・」
ということになります。
ただこれだと本当に言いたいことがわかりにくいので、
あえてオブラートを剥ぎ取って、むき出しの質問を投げた結果、
「かけられる費用はいくらですか?治療レベルはそれに応じて変わります!」
となったわけです。
獣医って守銭奴なんですね
どう思うかは個人の判断におまかせします。
しかし人の医療も含めて治療や診断には必ず原価がかかっていますし、
慈善事業でやっている医院でない限り、原価以上の請求が必要です。
尿検査みたいに検査の原価がほとんどかからないものならまだしも、
血液検査や外注検査なんかそれなりに原価がかかっていますから、
費用を頂かずに検査することなんか無理です。
(病院がつぶれてしまいます)
費用は仕方ないとして、治療レベルを変えるのはどうかと思う
もちろん最高の治療をすべての人にできれば一番ですよ。
でも先ほど言ったように検査・治療には原価がかかっていますし、
高度なことをしようとすればより原価が高くなることが大半です。
常に最高の治療を望むのであれば、最高の費用がかかるというだけです。
それゆえ我々獣医は常に、
「本当はこの検査をやってあの病気も除外しておきたいけれど、
あまりお金に余裕がないご家庭だから、今回は実施することは難しいな。
あの病気の確率は低いだろうし、妥協するしかない」
というような費用対効果(コスパ)を意識した仕事をしています。
それは入院の患者さんだけでなく、通院の患者さんも含めてです。
例えば・・・
急に食べなくなってしまった猫を血液検査したら、急性腎不全が見つかりました。
しかも重度の腎不全であり、即入院が推奨されますというようなケース。
<最も費用のかからない治療>
自宅で皮下点滴を自分でやってもらいながら、
さらには血液検査の回数をできるだけ減らすというプランです。
費用がかからない分、治療のレベルは低く、血液検査をケチっているので
腎不全が悪化していてもすぐには気づくことができない危険性があります。
また、血液検査しかしていないと腎不全の真の原因を見落とす可能性があります。
(例えば、尿管に石が詰まったことによる腎不全を見つけるにはエコーが必要)
<最も費用がかかる治療>
即入院し、静脈点滴を始めとした治療をしっかりと行うプランです。
血液検査を朝・晩と行い電解質を中心にしっかりとモニタリング。
尿量も尿道カテーテルを留置して測定しつつ、24時間体制で看護。
腎性貧血対して、造血剤(高い)や鉄剤・造血サプリメント等を使いつつ、
場合によっては輸血を実施。
しばしばみられる吐き気に対しては制吐剤(高い)を使用。
仮に腎臓の数値に改善が見られない場合は腹膜透析を行うとともに、
腎移植のドナーを探し始める、というようなこともあり得るかもしれません。
QOLを上げるため・命を救うためにできることは全て行っており、
治療レベルとしては最高ですが、その分費用も相当に高くなるでしょう。
例としては両極端なものを上げましたが、これだけ変わってくるということです。
どこまでやれるのかがハッキリしていれば治療の第一歩もすぐに動けますし、
飼い主さんのやって欲しい事と、獣医のやっている事のズレも防げるでしょう。
だから
「今回の入院のコースは松竹梅どれにいたしますか?」
って聞きたくなるわけです。
反論はいくらでも受け付けます。
ではまた。