危険度
低い
発生頻度
犬:多い
猫:多い
分類
眼科疾患
症状
目をショボショボさせている、目が痛そう、涙が多い、目が白いなど
詳細
眼球の最前部にある透明の膜が角膜であり、角膜が透明であるからこそ動物は物を視る事が出来ている。角膜は外界に接しているため、物理的な刺激や化学的な刺激など色々な要因で傷がつきやすい。そのため体には涙によって角膜の傷を治す力が備わっているが、その修復力の低下が起きたり、修復力を超えるレベルの傷がついた場合には角膜に傷ができる事になり、それを角膜潰瘍という。角膜には神経が豊富に走っていてわずかな傷でも痛みを生じるため、角膜潰瘍ができた患者は目を痛がるようになる。数日以上の期間に渡って潰瘍が治らないという事があれば、何かしらの持続性の要因があると思われるため、ドライアイやクッシング症候群、甲状腺機能低下症、異所性のまつ毛、異物の混入、などのチェックが必要になることも多い。また短頭種において眼球が前方に飛び出したり、瞼が閉じ切らないなどの犬種的要因が絡んでいる事もある。
角膜は潰瘍(傷)の深さによってグレード分けがなされており、最も悪化した場合には角膜に穴が開いて目の中の水が漏れ出てしまう角膜穿孔という状態になってしまう。角膜穿孔してしまった場合には緊急状態であって、すぐに動物病院に行った方がよい。角膜穿孔の治療が遅れた場合には、失明や取り返しのつかない眼の構造的変化を引き起こしてしまう可能性があるからである。
また猫ではケンカによる角膜の傷や穿孔が多く、眼球内部の水晶体まで爪が到達していた場合には時間が経過してから白内障が発症する事もあり注意が必要である。
診断
<フローレス試験>
角膜に傷が出来ているかどうかを専用の試薬(フローレス試薬)を用いて調べる事で診断する(角膜に傷が出来ている場合、試薬によってその領域が染色される)。あまりにも傷が深い場合には試薬で染色されないという事が起こり得るが、その場合には肉眼で潰瘍が確認できるため診断に問題は無い。肉眼で見て窪みがある場合でも必ずしも角膜潰瘍があるとは限らず、昔の潰瘍の痕跡として角膜がクレーター状になっているだけかもしれない。
<スリットランプ検査>
スリットランプと呼ばれる専用の機器を使用して、角膜の傷の深さを調べる事が出来る。拡大鏡でもあるため、潰瘍部分に感染を疑うような変化があるかどうかも調べる事ができる。
上記はあくまでも傷の有無や傷の深さを調べる検査であり、傷の残存原因を調べる検査が他に必要な事もある。
治療
基本的に目薬を使用した内科治療を行っていくが、治療が上手くいかない場合には外科的な手術・処置が必要な事もある。
<内科治療>
傷の修復を助ける目薬、角膜の融解を防ぐ目薬、感染を防ぐ抗生剤の目薬などが使われる事が多い。患者本人の血液から血清を分離して作られる、血清点眼を使用することも有る。他に原因疾患が見つかった場合には、そちらの治療も並行して行われる。
<外科治療>
瞼を縫って閉じたままにする処置、瞬膜で傷を覆う処置、結膜フラップ術、人工角膜被覆術、などいくつかの外科的な治療法が存在する。各手技にはそれぞれメリット・デメリットが存在するため、眼の状況に応じて適したものが選択される。
予後
原因が取り除かれれば良好。
猫のウイルス性角結膜炎など根治が難しいものが原因の場合には、コントロールが難しいこともある。