危険度
低
命に関わることはない
発生頻度
犬:多い
猫:少ない
分類
皮膚疾患
症状
肛門を気にして舐める、お尻をひきずる、お尻を痛がる、お尻から血が出ている
詳細
犬や猫の肛門の近くには肛門腺が存在しており、この分泌腺によって個体識別等を行っている。通常、肛門腺は便とともに少量ずつ排泄されていくものであるが、肛門腺の出口がふさがっていたり、肛門腺に感染をおこしたり、肛門腺の性状が変化したりすると排泄が上手くいかずに貯まる一方になることがある。そして逃げ場を失った肛門腺の分泌物は圧力を高め、最後には破裂して皮膚を突き破る結果となる。
肛門腺が過剰に貯留するとペットは肛門付近を気にし始め、舐めたり擦り付けたりといった行動をとるようになる。さらに貯留が進み破裂の直前になると、皮膚が薄く青紫色に変色した状態が見られる。この辺りで排便時に痛みを感じる場合があり早期発見につながるケースもあるが、ほとんどは破裂した際の出血や痛みでようやく飼い主に気付かれるものと思われる。
一度肛門腺破裂を起こした症例ではそれ以降も破裂を繰り返す可能性が高く、定期的に肛門腺を絞るか、外科手術によって肛門腺自体を摘出してしまう事が必要となる。肛門腺を絞る事は慣れれば誰でも行えるが、特に最初の内は感覚がわからず難易度が高いため、動物病院で指導を受けながら練習を積むのが良い。肛門腺を絞る必要のある症例はそもそも肛門腺が出にくい症例のため、絞ってもなかなか出ないことも多く、自分でやるのではなく最初から動物病院に任せてしまうというのも選択肢のひとつである。
診断
視診により行う。
肛門腺直上の皮膚が弾けていればこの疾患と思ってよいが、肛門周囲腺腫の自壊や肛門周囲婁なども似たように見えるため注意が必要である。
治療
患部を生理食塩水等で洗浄し、雑菌の感染を抗生剤で防ぎながら治るのを待つことになる。炎症の起きた場所を触るため強い痛みを伴い、気性の荒い個体などでは鎮静が必要になるケースもある。自宅では患部を舐めないようにエリザベスカラーの装着を行い、排便などで患部が汚れないよう清潔に保つようにする必要がある。治療期間は1~2週間程度であり、破裂した皮膚が塞がってしまえば治療終了となる。
肛門腺の破裂を繰り返す場合や、それが予想される場合には肛門腺自体を摘出する手術を行うこともある。手術自体は難しいものではないが、肛門に近い部分でもあるため感染には注意が必要になる。
予後
繰り返す可能性があるので注意は必要だが、予後は基本的に良い。