危険度
中
命に関わることはないが、早期治療が出来なければ視覚を失ってしまう
発生頻度
犬:やや多い
猫:少ない
分類
眼科疾患
症状
眼が赤い、眼が飛び出している、目が見えていない、充血が強い、目が痛そう
詳細
眼球の中は閉鎖空間であり、その中に存在する細胞に栄養を供給するための液体が絶えず生産・排出されている。この生産と排出のバランスが崩れてしまうと眼球内の液体量が過剰となり、眼圧が上がってしまう。実際には生産量の増加が問題になることはまず無く、排出量の減少による眼圧上昇がほぼ全てであり、それはすなわち眼球内に排出を妨げるような構造的異常が存在することを意味する。そして眼圧が35mmHgを超えた場合には視神経や網膜への血管が圧迫され、これらの変性・壊死が始まるとともに痛みを呈するようになる。こうした視覚に影響を与える眼の構造的疾患が緑内障であり、そこに眼圧の上昇が伴っているわけであるが、実際には過度に簡略化された「眼圧が上がる=緑内障」という認識がほとんどである。
緑内障は人のものと同様に一度発症したら治ることはない。また片目に発症した場合には短期間のうちに反対側の目にも発症する確率が高く、注意が必要である。犬では柴犬やアメリカンコッカー、シーズーなど特定の犬種において発生が高率で見られることがわかっている。
緑内障には単独で発生する原発性のものと、他の眼科疾患によって引き起こされた続発性のものが存在する。また発生からの時間により、急性の緑内障と慢性の緑内障に分けることができる。これらの観点は非常に重要であり、視覚を維持できるのか、緑内障の治療だけしていればよいのか、手術をするのか、といった今後の方針を決めるにあたって必要な情報となる。
診断
眼圧測定器によって眼球の圧力を測定し、高眼圧を確認することで診断される。隅角鏡を使用し眼房水の流出路を確認することもあるが、一般的ではない。
緑内障の詳細について「急性・慢性」や「原発性・続発性」の診断を下すためには、スリットランプ検査、眼底検査、超音波検査などを行う必要がある。
治療
治療は内科治療と外科治療の2通りが存在する。
<内科治療>
目薬を使い、眼圧をできるだけ正常の範囲に維持する事を目標とする。しかし目薬だけではいずれ眼圧をコントロールできなくなり、最終的に外科手術が必要になることも多い。
<外科治療>
視覚の温存が可能な状況かどうかで目指すゴールや行う手術内容が変わってくる。
・視覚が温存できる場合
毛様体レーザー照射術やシャントバルブ設置術を行うことで、眼圧を正常範囲に維持することを目指す。これらの手術をしたとしても定期的な眼圧のチェックは必要であり、点眼も随時必要である。また術後の時間経過とともに再度眼圧が上がってきてしまうこともありうる。
・視覚の温存が難しい場合
眼球自体を摘出する手術か、眼球内組織を摘出してシリコンボールに置き換える手術を行うことで、高眼圧による痛みから解放することを目指す。通常は眼球までは取る必要はない上に見た目が大きく変わってしまうので、現在では眼球摘出よりもシリコンボール置換術の方が推奨されている。これらの手術後は高眼圧が再発することはなく、緑内障に対する点眼の必要もなくなる。
予後
治らない病気のため、予後は悪い
(眼球摘出やシリコンボール置換手術を行った場合は、良い)